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女は立ち込める水蒸気の方に向かって走りながら、今度は手で何かを握る様な動作を起こす。
すると今度は水が剣の様な形状を保ったまま手に収まった。
そして、段々と晴れてきた水蒸気の中から異形が出てきた──その瞬間。
「ハァァァァッッッ!!」
異形の身体に手に持った剣を振り下ろした。
その衝撃で、辺りに轟音が響き渡る。
問題の異形は剣によって一刀両断され、黒い霞となって消えて行った……。
「ふぅ……」
女はため息を吐きながら水で出来た剣を消す。
「あ……やっちゃった……」
その直後、女はハッと我に返った様子で呟いた。
そしておもむろに携帯を取り出すと電話を掛け始めた。
「もしも──」
『はいはーいっ! もしもし!』
思いがけず大きな声に女は慌てて電話を耳から放す。
「夜中なんですからもう少し静かにして下さいよ……」
『なになに? 問題でも起こった?』
「いやあのだから聞いてます?」
『相変わらず早いよねぇー』
電話から聞こえてくるのも女の声である。ただしこちらは語尾に音符でも付きそうな声色だが。
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