第一章 かくれんぼ

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第一章 かくれんぼ

「子供なんて,いらない」 弟は言っていた。そんな弟が10年の交際を経て、結婚して、息子が生まれ時、「おんちゃん。(兄の僕を こう呼んでいた)自分の子供は目に入れても痛くない!って ホンマやで!」と,笑顔だった。, 弟は子供が生まれ、息子のために 生きていく事を決意し,息子の成長を楽しみに,なれない仕事を不器用ながら、一生懸命 働いた。 一雄(かずお)。2009年9月5日 早朝 出勤の途中。即死だった。線路をまたぐ、交互二車線の高架線。大型貨物トラックに正面衝突。弟は反対車線を突っ切り、自分から、突っ込んでいった。後方車の証言によると、フラフラした次の瞬間後、事故は起きた。息子は もうすぐ4歳 弟自身は35歳の誕生日を迎え、まもなくの事だった。 「息子さんが事故に遭われましたので、病院まで おこしくだい・・」警察からの電話で 母は 親父と一雄の妻に連絡を入れた。 親父は病院の近くにいたらしく、病院に向かう途中、渋滞に捕まりそうだったので、裏道から病院へ車を走らせ、母より先に病院に着いた。母も父も そして一雄の妻も その時すでに一雄が死んでいるなんて、夢にも 思ってなかった。 病院に到着した親父は 何も告げられないまま、手術室に案内される。「(手術室?・・・)看護婦さん!息子は 一雄は 生きとるんやろか!?( 死んでもうたな・・・一雄・・・)」親父は事態を把握した。 看護婦さんは、何も応えなかった。 手術室の扉が開く。横たわった 一雄。心臓マッサージが行われている。バン!バン!電圧が上げられる。心拍数の装置が反応する。しかし それは一雄自身の心臓ではなく、電圧によるのみの反応だ 妻が到着。妻は気が狂ったように、叫ぶ。医師は 手の施しがない様子。妻は叫ぶ。「止めんといて!止めんといて!ウソや!こんなんアカン!かずちゃん!逝かんといて!一夢(ひとむ)まだ3つやで!お願いやでウソや言うてぇな!お医者さん!止めんといて!・・・」ようやく病院に着いた母は ただ呆然と たちつくしていた・・・なぁ一雄。隠れてるなら早く出てこいよ。かくれんぼは、もう終わっただろ?
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