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「菜那ちゃん、ノートは?」
駅に着いたと同時に、紘美が言う。
「あ、そうだ!ちゃんとチェックしなきゃ」
あたしはブレザーの胸ポケットに入れていたピンクのノートを取り出すと、可愛い犬の付箋紙が貼ってあるページをめくった。
「10月7日は……えっと、10時に古文の宿題が出たでしょ。12時に、ナオから合コンに誘われて、あっ!19時にお母さんが帰ってくるんだ。うっわ、寄り道しないで良かった~。ありがとね、紘美」
「ほら、菜那ちゃん。ここに雨って書いてるよ?」
紘美が手帳をトントンと叩く。
今日の日付欄の隅に、
小さく小さく
『雨、降るぞ』と書いてある。
間違いなく、菜那子の字だ。
「もうっ!もっと大きく書けばいいのに。朝のバカあたしめ」
駅の階段を上りながら、あたしはノートを胸ポケットになおした。
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