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「そうか、ありがとう。
君のおかげで助かったよ、コイツを使わなくて済んだ」
私はM93Rを懐にしまい込む。
「自己紹介がまだだったな。
私の名はアーサー、アーサー=タイム・トルストイというしがない旅行者だよ」
◆
「俺はヌルだ。
ヌル=リザーバー・クオンタム。
でも皆はクオンって呼ぶ。
何か語感が悪いんだってさ」
クオンが笑う。
アーサーは、自己紹介が終わったばかりで唐突だが自身の疑問をぶつける事にした。
どうして彼等は突如満足気に退散したのか?
そして、その本は何なのか?
この二つだ。
口を閉ざされるかとアーサーは予想していたが、クオンは特に隠すでもなく教えてくれた。
「――魔導書ってのは知ってるだろ」
クオンが白カバーの本の表紙を叩きながら言う。
――魔導書、ここ最近になって発見され普及しつつある魔術や魔法の術式が組み込まれた代物の総称の事である。
ちなみに魔導“書”と表記されてはいるものの、必ずしも本の形をしているとは限らない。
その大きさは指輪サイズの小形な物から始まり、多種多様だ。
「さっきのは、この魔導書――白の魔導書の力だ。
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