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「さて、これはどういうことかしら、瑛太。私、アイツを逃がさないよう言ったわよね」
嶺人が螺旋階段に到達した頃、教室では雪月の前で正座し肩を小さくしている巨躯、瑛太がいた。
正座したことで視線はやや雪月の方が上になり、瑛太を見下ろしている。
かくいう瑛太は雪月のつり上がり殺気のこもった青眼を真っ正面から受けていた。
「でもさ~、雪月ちゃん。仕方なかったんだよ。嶺人君から~諭吉さんもらったちゃったし~。なんかこうっね~」
「あ゛ぁ、ナマ言ってんなよハゲ。あと雪月ちゃんと呼ぶな」
苛立ちを隠さず、幼さの残る容姿からは想像できないドスの効いた声で一喝、心なしか青筋が浮かんで見える。
「―――、ゴメンなさい」
こぇ―――――。
全身の毛が総毛立つ錯覚を得るが、実際瑛太の健康的に日焼けした肌には鳥肌が立っていた。
瑛太はその巨躯を、さらに小さくすぼめ肩が震えるのを必死に堪えた。
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