勇者と魔王と

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「なっ……魔王……だと? 何故、今ここで!」  勇者達の狼狽が手に取るように解る。何故儂が現れたか理解出来ないじゃと?  老格な厳重さを孕んだ声で静かに問い返す魔王。 「お主ら、本当に何故儂が現れたか解らんと申すか?」  その問いに本気で必死に首をぶんぶんと振る一行。  本気で解らんとは……。  怒りを通り越し。呆れた様子で魔王は勇者達の残虐な行いにより散っていった同胞達の方を指す。それを見る勇者一行。 「あれを見ても、何も思わんか?」  冷静さを保って、あくまでも優しく、父親が子に諭すように尋ね掛けたつもりだった。しかし既に沸点を超えた魔王の怒りはそんな上辺の演技で隠し通せるような物では無かった。それに対して勇者。 「いや、だって俺らまだレベル三十後半だし、こんななんの変哲も無い所でラスボスが現れるなんて露にも思っている筈無いだろ!? え、何? あっち? あれがどうかしたの? モンスターなんてエンカウント制だし俺達をレベルアップさせる為に設置しているんだろ!?」  相当焦っていたのか、早口に噛み噛みになる勇者。  しどろもどろなその様子は、言い訳をする子を彷彿とさせた。この者達は儂等がいつの間にか勝手に沸いて来るとでも思っているのだろうか?
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