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幾十にも施錠された重厚な扉の奥、全体的に薄暗くデザインされた、それ自体に重苦しい雰囲気を孕んだ議会の用途に使用される多目的室。そこに。
長椅子に深く腰掛けどっぷりと鎮座する男がいた。
老翁とでも言うのだろうか。口元に蓄えた髭は彼が生きてきた年月とその生きざまを物言わぬ導として外界に晒している。
月が闇で陰るように、この翁の表情も雲が掛かっていた。ため息を一つ溢すと、皹割れた顔に三度の皺が刻まれる。
この城、クラムシエルの主たる王。ブームバケット・ドラグラインは暗欝とした表情で机に視線を落とす。良く見ればそこに別の若い、ひょうひょうとした男の姿が映りこんでいた。
暗欝とした顔を更に憔悴した物に変え、視線は変えずに王は男に尋ねる。
「キースよ、早かったな」
呼ばれた男、燕緋服を纏いシルクハットを深く被ったまま意味深に笑う。それが王の気分を幾ばくか害したのか、遅れて拳を机に叩き付ける音が広がった。
「儂の気は長くは無いぞ。その意味が理解出来るのなら、エス・キースよ、現状を報告せんか」
王の眉根が見て分かるように上下に反芻する。更に王の纏う雰囲気が明らかに異質な物へと変化を遂げた。
物言わぬ圧力が男をその場に押し留め、載し掛る重圧が男を圧迫する。
これには流石の男も半歩下がり警戒を前にした。王はお怒りだ。否、焦っているのだ。あの、かつては世界を統べたドラグライン王が。英知を誇る王が。
面妖な雰囲気はぴくりとも変えぬまま、男は姿勢を正し王に向かい一礼すると、現状を報告し始めた。
「そうですね。何から申しましょうか……。率直に申しますと、不動の重鎮、キャッスルバニア=コラムクランプの主、アンカー・ボルトが殉職しました」
「なんと! あのボルトがか」
王の顔が驚嘆の色に変わる。アンカー・ボルトと言えば、そこにひょうひょうと立つ、キースと同等の立場、いや純粋な腕力だけならキースをも上回る、そんな男だ。奴が倒れるなど……やはり元凶は“奴”か。
「して……ボルトは誰に倒されたのじゃ?」
眉唾物だと思いながらも王は尋ねる。それに対し男はやはり表情を変えずに淡々と言ってのけた。
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