王と死神と

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 勇者一行の監査役を言いつけてあるキースからは、色々な話を聞いている。  民家に突然押し入り、窃盗を繰り返している事だとか。町の美術品を地面に叩き付け割った話だとか。しかも民は勇者に恐れおののいているのか、それを黙認しているとまで言うのだ。  噂では勇者に部屋を荒らされまいとわざとタンスや安い壷の中にアイテムを仕込む住人もいるのだとか。年貢のような物らしい。  なんたる外道かっ!  更に被害は人界のみならず、勿論我が魔王軍もその被害を多大に被っている。  経験値なる物を得る為に無数の殺戮を繰り返す勇者。それも希少なメタル族ばかりを狙う奴らに、彼等は絶滅寸前にまで追い込まれていると聞く。命を何だと思っているのだ。 「魔物達の中には勇者を見た瞬間、その場から逃げようと逃走を試みた者もおりましたが……」  キースが声のトーンを落として魔王に言葉を投げ掛ける。それに対し王は苦苦しい顔で歯を打ち鳴らした。 「時の砂、か? あれは儂が世の秩序を平定に保つ為、時の守人族に与えた宝具。まさか、一番見つかってはならぬ奴に見つかってしまうとはな」  思わず頭を抱えて唸ってしまう。
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