王と死神と

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「ご覧下さい。これが現在の勇者一行の現状です」  キースは自分の腕に刃渡りの小さな一本のナイフを突き立てると、そこから滴る血液を魔力で固め、薄く、丸く拡げていく。 “血霞の姿見”吸血鬼である彼の特技の一つである。  遠眼鏡のように、ぼうっと濁った映像が血で作成された鏡に映し出されていく。それはやがて、鮮明な映像へと変化した。  映し出された場所は、常人ならば絶対に立ち寄らないであろう、辺境の洞窟であった。  この映像に王の瞳孔がしゅ、と集束する。続いてかっ、と見開かれた副眼と共に怒声が波打った。 「あそこは、あの場所は……いたたまれなくなったメタル族を匿う為に儂が用意した、秘境ダイヤスラグの祠では無いか!」  そう、今紛れもなく映し出されている洞窟は、魔王が勇者に狙われ続けられるメタル族“全て”を避難させた、勇者に見つからないように魔王自らが結界を貼った秘境なのである。そこが奴らにばれたと言うのだ。  鏡の奥からあり得ない筈の声が聞こえて来る。当然勇者ご一行様だった。
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