死神と勇者と

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 少ないながらも細々と賑わいを見せていたメタルスライム達。そんな彼等の憩いの地が、今侵略されている。  始めは三百はいたであろう彼等の数も、時を経る毎に段々と減少している。原因は明らか。他の誰でも無い、本来ならば世界を平和に保つ役割を担った筈の勇者、その人なのだ。 「奴らには血も涙も無いと言うのか!? それとも我々魔物の命などどうでも言いとでも言うのか?」  これが勇者だと言うのだろうか……。自分達の、人間達さえ潤えば後はどうなろうと知った事では無いと言うのか。同じ、命を宿す生物だと言うのに。魔物も好戦的な者ばかりでは無い。中にはただ静かに暮らしたいだけの者もいると言うのに。  ついに魔王は深く掛けていたその腰を無言で浮かす。 「どうしたと言うのです、魔王様?」 「……これ以上、罪の無い命が無惨に刈り取られて逝く姿を、儂は見とう無い。奴らの暴虐な振る舞いを見ぬ振りをするのも、もう限界じゃっ!」  齢(よわい)うん千を超えると言う魔王の腕に血管が躍る。無言ながらにも背後にまで漏れ、沸き立つ魔力は、キースがこれまでに見てきた魔王のそれとは、どれも違っていた。  その感情を読み取ったのか、冷静に淡々と、しかし少しの優しさと憐れみを込めて吸血鬼は唱う。 「……行ってらっしゃいませ、我が主よ、御武運を祈ります」
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