第六章 ◇ 想い

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次の日。 いこうかどうか迷った。 待ち合わせの時間より一時間過ぎてしまった。 冬で寒いのに待っていたらいけないと思いひとこと言って帰ることにした。 公園へ行くと里穂は本当にいた。 泣いているのか……目をこすっている。 胸が痛くなった。 仁「………悪い。遅れた」 里「……まっ待ったよもーっ!でもいーや来てくれたしっどっか行く?」 里穂が無理して笑っているのが目に見える。 仁「…………話したいんだけど」 里「…あはは。じゃあその辺歩きながら話さない……?」 里穂と俺は適当にぶらぶら辺りを歩いた。 里「……手紙読んでくれた?」 仁「……あぁ」 里「そっかぁならよかった………」 仁「あのさ…」 里「あっ!あれなにかなー」 仁「は?」 里「今なんか空が光ったよ」 仁「飛行機雲じゃねーの?」 里「そーかなぁ。でなんだっけ?」 里穂は苦笑いしながら話しかけてきた。 仁「だから…」 里「あっ!そうだっおにぎり作ってきたの!食べる?』 仁「里穂……」 里「どっちがいい?」 仁「里穂っ!」 話を聞こうとしない里穂に怒鳴ってしまった。 里「……………なんで?…あたしのこと…………嫌いになった………?」 仁「……………」 里「…ねぇ……仁――――…答えてよ……」 仁「…………」 里「やだよ…もう置いていかないで………離れたくない……一緒にいたいよ…仁………そばにいてよ…」 仁「……里穂」 里「やだっ……」 里穂は泣きながら抱きついてきた。 里「もう二十歳過ぎちゃったけど…………プロポーズされてないよ…………なんでも一人で決めないで…ぇ…っ」 仁「………っ里穂が泣くから………俺のせいで里穂が泣くから…」 いつの間にか俺の目からも涙が出ていた。 仁「俺は里穂に笑っててほしい――…」 里「だったらなおさら…そばにいてよっ…………仁じゃなきゃ………仁がいなきゃ寂しすぎて死んじゃうよ………」 俺は泣きじゃくる里穂にキスをした。 仁「……ごめん……里穂…お前にはもう…笑顔を守ってくれる奴がいる………」 俺は里穂に背中を向けて歩き出した。 里「やだっ…っ行かないでっ………仁っっ」 後ろから聞こえる里穂の声は次第に遠くなっていく。 里穂……… 好きだ。 好きだ……好きだ 好きだっ…… 声に出さずにそう何度も叫んだ。 .
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