第七章 ◆ 道

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要「好きな人が……いるんでしょ…?」 仁「……あぁ」 俺は頷いた。 要は気づいていたらしい。 要「その子は今どこにいるの?……付き合ってるの?」 仁「……東京にいる…………昔付き合ってたんだ…」 要は何かを考えるかのようにしばらくの間黙り込んだ。 要「じゃあさ……あたしがそれを忘れさせる………だから…付き合って…」 要は俺に抱きついてきた。 仁「…要………ごめん…お前は大切な友達だから傷つけたくない」 要「やだ……っ」 俺が要を離そうとしても要は離れなかった。 仁「要……っ」 要「あたし……っあと1ヶ月しか生きられないの…………っ」 要は泣きながらそう言った。 1ヶ月………? 1ヶ月後………要は死ぬ…? 要「……癌の進行が早くなってて…………長くて1ヶ月だって…本当なら外に出ちゃダメなの―……っ」 仁「…………っ」 何も言い返せなくなってしまった。 要「だから……そばにいてよっ……東京にいる元カノを…忘れるために利用していいから……あたしはっ…残りの1ヶ月………仁と過ごしたい…っ」 要は抱きしめる力を強くして泣きながら言った。 俺はなにも言えずにいた。 俺はどうする…? あと1ヶ月しか生きられない要を見捨てる……? そんなことできない… 今要には俺しかいないんだ……… 里穂には……和樹がいる…… 仁「………わかった」 俺は要の頭をなでた。 .
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