第七章 ◆ 道

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――――― ――――――――――― 要母「この子ね………あなたに出会って本当に変わったの……」 病室には俺と要のお母さんが2人。要のお母さんは要の手を握り締め話し始めた。 要母「治療は絶対にしないってあれほど言っていたのに……あなたのことが本当に好きなのね………突然治療を受けるって言い出したの」 要のお母さんは泣くのを我慢しながら話していた。 お母さんの言葉に胸が痛んだ。 要母「……あなたにお願いがあるの…………要が死んでも…要を忘れないで……お願いっ」 お母さんは強く要の手を握り締めた。 要母「………要…?」 お母さんが要の名前を呼ぶと少しだけ手がピクリと動き 要が目を開けた。 要「……お…かあ…さ…ん」 要母「要っ」 お母さんは要の手に抱きついた。 要「……じ……んと……はな…し…たい」 要母「……わかったわ…」 お母さんはそう言うと病室を出た。 仁「………要…俺っ……」 自分の本当の気持ちを言おうとしたら要は俺の言葉を遮った。 要「……い……わない…で…………今だけ……あた…し……だ…けの…じん……で……い……て」 仁「……わかった…」 俺は要の手を握った。 その手は本当に細くて小さくて………… 要「……ね…ぇ……仁…こ…れが…さ…い…ごだ………から………………わ……がま…ま…き…いて」 仁「……あぁ」 要「…き……す…………して……」 要は苦しそうにしながら言った。 俺はそっと要の唇に自分の唇を重ねた。 要との――――――… 最初で最後のキス…………… 涙の味がした―――――… 《――――――ピ――――――――――…》 仁「か……なめ…」 要は涙を流しながら安らかな眠りについた。 握り締めていた手も握る力を失い 病室中に心拍の停まったノイズが響き渡った。 要母「要っ」 病室から出ていた要のお母さんも中に入ってきて泣き叫ぶ。 要母「――――要っ―要っ要ぇぇぇえっ――――いやぁぁぁぁぁあっ」 俺の目からも初めて涙が流れ落ちた。 要のキスから――― 里穂のところへ戻れって―――――――伝わってきたから…… 要――――… 好きになれなくてごめん……… 俺は絶対に要のことを忘れない――――…要の死も無駄にしない………………… だから――… 弱い俺に勇気をください―――――… .
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