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今のウィズのご先祖様達がな、パウスって種族と戦争した時に、どうしても負けそうになった……。
そこで、俺達の先祖は『造られた』……。
同じウィズの中から、セイレルの構成要素……『形造ってるもの』って言った方がいいか?
とにかくそれを身体に無理矢理組み込んで、俺達の先祖『ニーム』は『造られた』。
戦争で活躍したのに、今は身体能力がずば抜けすぎて気味悪がられてるんだ。
俺はな、ヒトが何故、自分から生まれたものを気味悪がるのか疑問なんだよ。元は同じなのに。
お前だって、ウィズだろ?同じウィズなのに気味が悪いっておかしいだろーが。」
「ランテさんにとって……、ニームも精霊眼(セイレル・アイズ)も、同じヒトって事?」
「パウスもな。
……皆仲間だ、元は一緒だ。
差別なんてする意味が分かんねーよ。」
ニッと、ランテが笑った。
徐々に暗くなり始めたので、近くに放ってあった大きな鞄を拾いあげ、テントの準備を始める。
「あーー、ちと脱線したが、直結に言えば『最初から気持ち悪くなんかない』だ。
んで、『精霊眼(セイレル・アイズ)』を研究する訳はな、
『この眼のヒトは、セイレルを見る能力があるだけで、化け物でも何でもない』……って証明したいんだ。
皆が理解すれば、すぐには無理かもしれねーけど、差別はやがて消えると思う。
『精霊眼(セイレル・アイズ)』を持ったヒトが今後生まれても……、今度は普通に暮らせたらいいって、それが俺の考えだ。」
そんな事を話しながら、ランテは手際よくテントを張る。
東から少しずつ、夜がやって来る。
「……ランテさん……、
もし……、もしランテさんの説が証明されて、差別が無くなったら……、
僕も普通に暮らる?幸せになれる?」
「……やってみなきゃ分かんねー……、だけど、何もしないよりはマシだ。
言っただろ?『手伝う』って。
俺は俺の出来る最大限の事で、お前を応援してやる!
だからな、すぐにとは言わない。
前を向いてくれ。未来を見て歩け。」
少年は少し顔を上げると、真剣な表情になった。……何かを決意したような、今まで見たことのない表情に、ランテは少し驚いた。
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