遠き道のり、目覚める力。

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………再び、ケミールの過去へ戻る。 ……ランテと出会い、その日は旧エデリア近辺でテントを張って野宿し、 次の日になって、本格的にケミールはウィズ王都に向けて旅立つ事になった。 朝食は日持ちのする堅めのパンに、ムムタスハムを挟んだものと、乾燥ムム肉を湯で戻したスープ。 久し振りに意識が戻って、初めて口にする食べ物だった為か……。 パンの堅さをもろともせず、ケミールは凄まじい勢いで食べていた。 「おーー……。  やっぱり腹減ってたんだな。  あんまり早く食うと――」 「むぐ。」 「……ほら言わんこっちゃない。」 思い切りパンを喉につめ、パニック状態に陥ったケミールに水を飲ませて何とかするランテ。 何とかパンは喉を通り、ケミールはホッとすると、スープを飲み始めた。 ちなみに……、その後方……。 ランテのクロー(爪刃)がカタカタと動いていた。 理由はもちろん……。 (出しな!!今すぐ出しな!!  あたしは朝からあんたの近くがいいんだよボケナスッ!  テントに置いてくんじゃないよドテカボチャッ!) ……悪口の剣精、否、地の剣精こと、地霊虎(アスタイガ)。今日も彼女は朝から悪口全開。 「……ケミール。 一応言っとく、雷霊狼(リウギ)は『檻』に入れたが、『鍵』はお前が持ってるんだ。 お前が出そうと思えば、いくらでも出せる。 寂しかったら出せばいい。乗っ取られたらいくらでも止めてやるからな。」 ランテは地霊虎(アスタイガ)の訴えを完全に無視した!! クローが動きの激しさを増す。 『カタカタ』、から、『ガタガタガタガタ!!』ぐらいまで。 「ううん、雷霊狼(リウギ)はずっと反省!  街の皆の事もあるし……、僕も苦しかったから……。」 そう言って、ケミールは『檻』の入った袋を自分の鞄にしまいこんだ。  
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