3人が本棚に入れています
本棚に追加
「まぁ待て。
そこのガキを渡せ、そいつぐらいしか価値はなさそうだからな??
坊ちゃ~~ん、きれーな紫の髪してるね~~?こっちにおいでー。もっとよく見せてごらーーん?」
ケミールは怯えてランテの側から離れようとしない。賊の首領も短気らしく痺れを切らす。
「そうか~~、嫌かぁ~~。
オジサン残念だなぁ?
……おい、あのガキ捕まえろ。オッサンの方は好きにしろ、殺すなりなんなりな。」
「へいっ!」
賊が一斉に襲いかかる。
思ったより数が多く、ランテは舌打ちする。
「……外道が。」
ランテは突っ込んで来る賊の集団にクローを向ける。クローに赤い光が収束し、辺りが高熱に包まれる。
「!?」
「ケミール、下がってろ……。
ちと危ないぞ……。
……炎の子よ、
その力、赤き砲弾とし、
我が敵に打ち出さん……。
第5級赤術。
精霊火(セイレーンフレア)!!」
ランテのクローから火球が撃ち出され、賊の集団に直撃する!!
火球の後を追うように、ランテは動揺する集団へ突っ込み、近くの数人を斬り倒した。
「こっから先には行かせねぇっ!!」
ランテはそう叫びながら、襲い来る賊を、次々蹴散らしていった。
……………。
後ろに残されたケミールは、不安げにランテを見守る。
あんな集団を相手に……、たった一人で立ち向かって行くランテ。
これも……全て自分の為だと、ケミールは分かっていた。
……分かっていたから、辛かった。
自分に力が無い事が。
「………っ。」
そっと、鞄の中の『檻』に手を掛ける。
雷霊狼(リウギ)を出せば、もしかしたらランテを助けられるかもしれないと……、
しかし、それはためらわれた。
また……雷霊狼(リウギ)の力でヒトを殺すのか?また、エデリアでした事と同じ事をするのか……?
そう思って、鞄に再び『檻』をしまいこみ、両手を合わせて祈る。
分かっている、ヒト殺しの自分の祈りなど神様に届かぬ事を。
だけれども、祈らずにはいられない。
金属がぶつかる音が聞こえる、悲鳴が聞こえる、雄叫びが聞こえる。
……そんな中、声が聞こえる……。
最初のコメントを投稿しよう!