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「(危ない……!逃げて!左から悪いヒトが来るわ……!)」
「!!?」
この感じを、ケミールは知っていた。
これは、セイレルの声。明らかに自分に危険を知らせている。
ちらりと左の茂みを見ると、賊がこちらに向かって来ている。
「………っ……!!」
「ちっ!気付かれたか!
ぎゃはははは!待ちやがれ!!」
ケミールは左から来た男から逃げる為に走り出す。しかし、そんなにケミールの足は速くない。
ちょこまかと動き回るが、時々賊の手が髪を掠める。捕まるのも時間の問題だった……!
「!? ケミールッ!!」
ランテがケミールの方に気付いたが、すでに手遅れ。
ケミールは腕を掴まれてぶら下げられていた。
「へっへっ!捕まえた~~。」
「あんまり手荒に扱うんじゃねぇぞ?
骨でも折れたら使い物になんねぇからな!」
すぐにランテはケミールを助けに走るが、背後の賊に蹴り飛ばされて地面に転がり、上から踏み付けられる。
「ランテさんっ!?」
「(ランテっ!!何であたしの力を使わないんだい!!?)」
「……ッ、地霊虎(アスタイガ)お前の力を、こんな奴等なんかに使いたくなかったんだ……。」
「(~~!!あんたねぇーー!!)」
地霊虎(アスタイガ)が怒っているが、これはマズい。
ケミールは腕を封じられており、『檻』を取り出せない。
ランテはこの通り、踏まれ中。
「……やめて……。」
ケミールが小さく呟く、
自分はどうでもよかった。
殺されようと、さらわれようと。
だが、ランテだけには、傷付いて欲しくなかったのだ。
自分を初めて理解してくれたヒトだから。
こんな奴等に傷付けさせたくない。
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