..Chapter001,

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   制服が、地域の子たちに“ダサい”と評判のブレザーに衣替えになった頃、それは起きたんだ。  ただ毎日家と学校の往復を繰り返してた。他に行くところもなければ、一緒にどこかへ行こうかと言ってくれる相手も居ない。家族以外とは会話をしないもんだから、わたしは今何が流行ってて何が人気なのかを一切知らなかった。わたし、本当に漂っているだけじゃないか。みんな、放課後はショッピングセンターやカラオケに行ったりして有意義な時間を過ごして、休日になると映画やランチを楽しんでいるということくらいは、わたしも知ってる。みんな必死に、毎日流れてく時代に、流れにのっかろうとしていることも。お洒落したり芸能人の話したり、映画やテレビの感想を辞書にない言葉で言い合ったりして、ね。わたしは流されているだけだ。いいや、もしかしたら溺れ死んでしまっているのかもしれない。テレビも、ファッション誌も、わたしはほとんど見ないし、見ようとも思わなかった。――その必要が、ないのだから。  
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