..Chapter000,

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   いつだって、わたしは、誰かの顔色ばかり、見ていた。  だから、こんな風になっていることに、最近、気付いた。  わたしが、小学校へあがる前の話だ。卒園も近い冬の一番寒い日に、お母さんはわたしをデパートの中にある鞄屋さんへと連れて行った。もちろん、わたしのランドセルを買うために。まだ冬だというのに店頭にはピンクの桜のイラストがこれでもか、という程に飾られていて、眩しかったのを覚えている。ゴシック体ででかでかと書かれたごにゅうがくおめでとう、の字を、わたしは読むことができた。両親が「結はとってもいい子だね、天才だ、将来が楽しみだ」なんて褒めてくれるのが嬉しくて、わたしはいろんなことを見て、覚えていた。学ぶ楽しさは知らなかったけれど、両親の笑顔を導く方法は知っている。両親の嬉しい、がわたしの嬉しいだった。  
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