..Chapter002,

7/16
前へ
/68ページ
次へ
   安西さんの口元は三日月形に歪んでいるのに、目は、その病的な色の顔は、笑っていなかった。なんだかわたしが悪いことをしたような気持ちになってきて、なにか取り繕うような、たとえば謝罪の言葉でもひとつ言おうとしたけれど、そんなわたしの肩を彼女は強く掴んで激しく揺さぶるもんだから、何も言えなくなった。 「なんでおまえなんだよ」  言葉だけは比較的丁寧だった彼女から飛び出した「おまえ」という言葉に驚いたのは、わたしだけじゃなかった。慌てて、見ているだけだった子たちが制止に入る。  
/68ページ

最初のコメントを投稿しよう!

2人が本棚に入れています
本棚に追加