..Chapter002,

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   目に溜まった涙を乱暴に拭って、彼女は教室を小走り気味に出ていた。見計らったようなタイミングでチャイムが鳴ると、わたしのことを冷たい目で見ていたクラスメートたちが、わらわらと自分の席に帰って行った。わたしも、思い切り立ちあがった。たちくらみがして、目を閉じた。瞼の裏がきらきらして、その奥に、彰くんの姿を見た。 「……遥ちゃん、大丈夫かなあ」 「遥ちゃんより、仁科さんじゃない? 遥ちゃんの目、みた? すごくこわかったよ。絶対仁科さんやばいよ。遥ちゃん敵にまわしたら、超怖いもん……」  周りの空気を読みながら地味にひっそり、それでも有意義に過ごしてる子たちがそうやって囁いているのは聞こえないフリにした。わたしは誰の目も見ないように下を向いたままゆっくり立ち上がって、スカートについたチョークの粉をひたすらはたき落していた。  
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