..Chapter003,

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   しばらく、わたしは彰くんと連絡を取らなかった。バスを使わず電車で通い、携帯の電源は入れなかった。安西さんは飽きもせず、毎日毎日つっかかってきたりモノを隠したり汚したりしてきたけれど、辛いというより苦しかった。哀しいというより、虚しかった。彰くんと会わなくなって、一人きりに戻っただけなのに、自分を恨んでいる人間がたった一人でも居るという真実は、わたしの想像以上に重くのしかかってくる。不安で恐怖で涙が止まらない。誰かに『大丈夫だよ』と言ってほしかったけれど、今、わたしの脳裏に浮かぶその“誰か”は彰くんではなかった。なぜか。  
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