..Chapter003,

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   彼が囁いた愛を、しらけてしまったわたしは受け止められなかった。わたしには両親と年に数回も会わない親戚と、彰くんしかいないのに。  ハルカ以外とはしたくない、ハルカ愛してる。ねえ彰くん、安西さんにそう言ったんですってね。それは本心だったの? なら、何でわたしを選んでくれたの? それは嘘だったの? だったら、わたしはあなたがくれた言葉も全部、本当なのかわからないね。  そんなことを言い出せばキリがないことくらいわかっている。でも、追い詰められていく一人ぼっちのわたしには、猜疑心しか生まれなかった。 「しね。仁科しね」  シンプルな二文字の言葉に、わたしの心が削り取られていく。少しずつ、少しずつ。  
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