..Chapter000,

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   わたしの欲しかったものは、今まで与えられてきたようなものなんかじゃなかった。小学生の時、友達が100円玉握りしめて駄菓子屋さんに走って行くのを遠目に見ているだけだった。泥だらけになって走り回っている友達を、一枚数千円もするワンピースを着たわたしは、見ていることしかできなかった。服を汚して帰ると、お母さんは眉根を顰めるのだ。結ちゃん、遊ぼうよ。そんな言葉に頷かないわたしの周りからはどんどん人が居なくなって、本当に、見ているだけになってしまっていた。あの駄菓子屋でみんなが袋いっぱいになるまで買っていたものは、なんだったんだろうか。クルクルしたチューブに入ったゼリー、ざらめがたくさんついた小さなドーナッツ、濃い味付けのスナック菓子。わたしはずっと、食べてみたいと思ってた。今も、ね。  
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