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勝ち誇ったような彼女の笑みは、わたしの心をゆらゆらと煽る。炙るように、ねぶるように、じわりじわりと。消えかけていた不安がまた燃え上がる。
だからわたしは、迷わずカバンの底から携帯を取り出す。先生に見つかれば没収されるとか、考えている余裕がなかった。彰くんの携帯を呼び出す。そんなわたしの様子を見て、安西さんは髪をかきあげながらゲラゲラ笑う。わたしの心は、荒んでいた。冷静ではいられなかった。わたし、イッちゃってたんだろう、今こうして、思い返してみれば。
「あははっ。必死すぎ、馬鹿じゃないの? 男に捨てられかけた女って、こんなにも滑稽なのね」
「わたしはっ……」
「山原くんから聞いたわよ。あなた、“した”次の日からおかしくなったんですってね。本当は愛も恋もないんじゃないかしら。ただお友達になってくれたのが嬉しくて、それを恋と錯覚したんじゃないの?」
呼び出し音が鳴るばかり。
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