..Chapter004,

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   携帯の向こうで彰くんはなにか言っていたけど、わたしの耳には、もう届かない。わたしは携帯を両手で慈しむように抱きしめてから、通話状態も切らずに携帯を真っ二つに折った。安西さんの哄笑のほかにどよめきが聞こえてはじめて、自分が注目されていたことに気がついた。ひそひそ声が、冷たい雨のように降り注ぐ。ただのゴミになった携帯が、わたしの手から滑り落ちた。ここが学校だ、ってことを忘れて、わたしは目を閉じて、わんわん泣いた。不意に何かがぱちーん、と弾けて、両足の力が抜けて身体が傾いだ。ああ、わたしはもう、何も信じられない。というよりも、すごくすごく弱くなってしまった気がする。一人じゃ、もう生きていけないよ。呼吸の仕方さえ忘れてしまって、すごくすごく苦しいよ。笑い声と囁きが、遠ざかっていく。再び目を開くにも瞼が重くて、何でだろうなと考えているうちに、わたしの、ぼんやりとしていた意識は遠のいていった。  
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