..Chapter000,

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   わたしも、あと10年、20年すれば。お父さんの言った通りの勝ち組の人生を送りながら世間を見下して、勝った勝ったと小躍りしているのかもしれない。けど、そんなわからない未来のために今、疑問を抱きながら流れに身を任せているだけなのは、正直言えば、イヤだった。 「……ちょっと、仁科さん」 「え、あ……ごめんなさい。なにかな?」 「何? じゃないわよ。今、進路調査のプリント集めてるの。早く出してくれない?」 「あ、うん……ごめんね、今出す……」 「ぼーっとしないでよ、あとはあなただけなんだから」  わたしと同じ、ううん。ヘタしたらわたしのところよりもずっと恵まれた家庭に生まれた子たちの中でも、わたしはやっぱり浮いてしまって、一人ぼっちだった。自分の周囲に不満だらけなのに吐き出せずに悶々としているわたしは、みんなに敬遠されてしまっていた。  
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