..Chapter000,

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   ねえ、この時点でわたし、負けてるよね? 中学に入ってから三年間、ずっと一人で友達なんて居ないのに。たまにそんなわたしを気にして近づいて来てくれた子たちが居ても、わたしはそんな彼女らの顔色を窺いながら喋るもんだから、それが自分たちと居てもつまらないのか、ととられてしまって、結局また一人になる。 「うぇー。仁科さん、内部進学だって。なんかヤだね」 「どっかよその高校行けばいいのにね」  クスクス笑う声が聞こえて、わたしはまた小さくなる。  いじめられていないのが奇跡なくらい嫌われているのは、わかってるよ。わたしだって違う高校行って、人生やり直せるならそっちがいいよ。けど、けどね。黒女(ここ)から有名大学へ進むことを望んでいるお父さんには、なんて言えばいい? はむかう勇気が小指の先ほどでもあるならば、わたしはきっと、もう少しのびのびと生きているだろう。  ただ従って、ただ流れるだけ。両親の所有物みたいなわたしは両親の顔色を見て、両親を喜ばせるためだけに踊るのだ。そんなものだと諦めきれていないのかな。いっそ感情なんか殺しちゃって無感動になれたら、どんなにラクだろうか。  
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