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が、彼が振り返えりきる前に、凛とした威圧感のある大声が鳴り響いた。
「鍵屋!! 鍵屋はここだと聞いたが店主はどこだ出てこいッ!!」
「ハッ? うっえぇぇぇっ!?」
あまりの気迫に、ヴァルディは思わずカウンターの影に引っ込む。
入口を破壊せんばかりに打ち明けた犯人は、ボロボロの銀色の甲冑に身を包んだ一人の女性。
赤茶けた薄汚い髪を後ろに束ね、茶色の瞳を持つ彼女は、ガシャガシャと音を立てながらカウンターへと近づく。たとえ目の前に猛獣が居ようが大河が流れていようが、構わず前え進む程の勢いだった。
彼女はカウンターの裏にヴァルディが隠れていることに気がついていないのか、カウンターに置いてあるベル……ではなく、カウンター自体を叩いて叫び続ける。
「今すぐ鍵を修理してほしい! 私は今すぐにでも王都に戻らねばならんのだッ!!」
カウンターからベキン、と不穏な音が上がる。店の顔を壊されてはたまらないと、ヴァルディは意を決しカウンターの裏からひょっこりと顔を出した。
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