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春―――
今日は待ちに待った入学式。
私、相武愛華(あいぶちかげ)は真新しい少し大きいサイズの制服に身を包んでいた。
「愛華ー??」
『はーい、今行くー』
母が下から私を呼ぶ。私はバタバタと階段を降りて母の元に行く。
「制服、大きいねぇ」
『そりゃー・・・お母さんが15号なんて頼むからでしょー?』
15号は制服のサイズの中で一番大きいサイズ。体の小さな私にピッタリなサイズは大体13号あたり・・・。まるで制服が歩いてるかのように見える。
「とりあえず、そこに立って」
『えー?』
「写真撮るんだから!」
そう言って母はデジタルカメラを私に向ける。
『・・・なんか、お母さんの方がはしゃいどるやん』
「当たり前やろ、娘の晴れ姿なんだから」
そんな会話をしながら撮った一枚の写真。その写真に写ってるのはぎこちない笑顔をした私。それは中学生になるという喜びと不安の二つが交じった笑顔。
一段大人の階段をのぼった気がしての喜び。
沢山の知らない人と友達になれるのかという不安。
―ポツッ
ポツポツと降りだした雨はまるで・・・私の不安を悟ったように見えた。
『きっと、大丈夫だよ・・・ね?』
そんな私の呟きは雨の音に掻き消された。
「もうそろそろいくよ、愛景」
『ぅん・・・!』
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