Episode 1「父から」

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田中近代工場店頭 「それでは」 水葉技術士官は背の高い女性に軽い程度の挨拶をした。 「ええ、楽しみにしてますわ……あ、士官」 「はい?何でしょうか橘さん」 「来週息子さんの誕生日でしたよね」 「……ん、ああ、そうだったかな」 水葉技術士官は頭を軽く掻きむしり考えていた。 「私が代わりに何かプレゼントしときますわ」 「い、いやそこまで……」 「良いんです、技術士官は職務を全うしてくだい」 橘と呼ばれた女性がニコリと微笑んだ。 「は、はぁ了解しました……それでは橘さん、社長にもよろしくお伝えください」 ええ、と言った感じで彼女は笑顔を見せた。 と、女性は田中近代工場の自動ドアを出て行った。 「来週だったか……な? 俺も用意するか」 機械のように仕事をする彼も一人の父親。
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