出会い

8/8

6人が本棚に入れています
本棚に追加
/13ページ
ふと、僕は寸胴のいる方を向いた げっ! あいつ、こっちを向いてるじゃないか 美羽はこちらに気づくと満面の笑みを浮かべてきた すると風が言った 「おい、お前の彼女さんがこっち見て笑ってるぞ、手でも振ってやれよ」 僕は風に視線を戻し言った 「だから嫌だって!」 僕は必死で否定したが、風の冷やかしは止まなかった 「ほら、現実を受け入れろってー、現実をー」 風は冗談のように言っているが 笑えない 「あのさ、僕は平間さんにしか興味がないんだ、見てくれ!あの大人しげなのにどこか光る部分があって、とっても魅力的じゃないか!」 それにくらべて… 僕は再び寸胴の方を向いた うん、やっぱりあの美しさは比べ物にならないな 僕が寸胴の方をずっと見ていると、寸胴は恥ずかしそうにどこかへ消えてしまった 風はひたすら笑っていた なにが言いたいのかは解っている 「僕に気があるって言いたいんだろ、風は」 僕が不機嫌そうに尋ねると 風は言った 「よかったな春が来て」 「よくないよ…」 僕たちはこんな会話を放課後までひたすら続けた でも僕には寸胴なんてどうでもよかった ただ平間さんの事が気になって仕方なかった… この時の僕は平間さんの事を考えているだけで幸せになれた
/13ページ

最初のコメントを投稿しよう!

6人が本棚に入れています
本棚に追加