6人が本棚に入れています
本棚に追加
/13ページ
ふと、僕は寸胴のいる方を向いた
げっ!
あいつ、こっちを向いてるじゃないか
美羽はこちらに気づくと満面の笑みを浮かべてきた
すると風が言った
「おい、お前の彼女さんがこっち見て笑ってるぞ、手でも振ってやれよ」
僕は風に視線を戻し言った
「だから嫌だって!」
僕は必死で否定したが、風の冷やかしは止まなかった
「ほら、現実を受け入れろってー、現実をー」
風は冗談のように言っているが
笑えない
「あのさ、僕は平間さんにしか興味がないんだ、見てくれ!あの大人しげなのにどこか光る部分があって、とっても魅力的じゃないか!」
それにくらべて…
僕は再び寸胴の方を向いた
うん、やっぱりあの美しさは比べ物にならないな
僕が寸胴の方をずっと見ていると、寸胴は恥ずかしそうにどこかへ消えてしまった
風はひたすら笑っていた
なにが言いたいのかは解っている
「僕に気があるって言いたいんだろ、風は」
僕が不機嫌そうに尋ねると
風は言った
「よかったな春が来て」
「よくないよ…」
僕たちはこんな会話を放課後までひたすら続けた
でも僕には寸胴なんてどうでもよかった
ただ平間さんの事が気になって仕方なかった…
この時の僕は平間さんの事を考えているだけで幸せになれた
最初のコメントを投稿しよう!