1.男友達

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 金曜日の休み時間、夏実の席で香絵と話していると、健太がベランダをつたってやってきた。 「なぁ夏実、世界史の教科書貸してよ」 「えー持ってないよ。うちのクラス今日無いもん」 「私、持ってるよ」 「ホント? 山内さん貸してくれる?」 「うん……ちょっと待ってて」  香絵が顔を赤らめながら、後ろのロッカーへと向かう。 「さすがは山内さん」  健太がイジワルな視線を夏実に向ける。 「忘れる方がバカなんでしょ!」 「ヘーい、へい。ーーあぁ夏実、今日の放課後は大丈夫だろ?」 「え、あ……うん」 「じゃあ、いつもの所で待ってるから」  夏実が黙って頷いた時、香絵が世界史の教科書を持って戻ってきた。 「はい」 「ホント助かる。ありがとう」  香絵は赤くなったまま首を横に振る。 「じゃな」  去っていく健太を、恋する眼差しで見送る香絵を横目にみながら、夏実の胸に小さな罪悪感が浮かんだ。 「香絵……」 「やっぱり塚原君ってかっこいいね」 「――そお?」  その時始業チャイムが鳴り担当教師が入ってくると、香絵も席に戻っていった。 .
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