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大きな屋敷の門をくぐり、インターフォンを押したが何の返答も無い……。
典子は鞄から鍵を出し、自分で開けて中へ入った。
家の中はシーンと静まり返っていて、典子の履くスリッパの音だけが響いた。
ダイニングへ向かうと、テーブルの上にメモと1万円札が置かれてある。
『仕事で遅くなります。適当に出前を取って食べて』
ぼんやりとメモに目を通した典子は、メモをゴミ箱へ捨て、携帯を開いて発信した。
「ーーあ、瑞江?典子だけど夕飯おごるから一緒に食べない?――いいの、今日のお礼――うん、じゃあ後でね」
電話を切った典子は、無表情のまま、食器棚の引き出しを開け、長財布から更に1万円を抜き取ると、制服のまま家を出て行った。
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