唯一の憂鬱

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その時、何かが変わった。 漠然と言い表すなら、空気が変わったとしか言い様がない。 ふと、西王が炎を消して標的へと歩き始めたのだ。 それは異様な光景だった。 例えるなら、嵐の前の静けさ。 ただ歩いているだけなのに、鳴神を含める西王以外の人間を物怖じさせていた。 ───来る、嵐が。 突然、西王が消えた …いや、消えた様に見えただけだ。 西王がしたことは、力強く一歩を踏み出しただけ。 その一歩が速すぎて、僕らには消えて見えたのだ。 西王という名の弾丸は、鳴神に向かって直進しながら拳を突き出した。 鳴神は、かろうじて顔を傾けこれをやり過ごす。 しかし、いきなり顔面を狙うとは、なんとえげつない行為だろう。
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