唯一の憂鬱

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西王がこちらを向いたことで、周りの女子は黄色い声を上げていた。 しかし、その歓声は悲鳴に変わる。 「よそ見をするな!」 という叫びと共に、鳴神が手から稲妻を発生させたのだ。 紫電一閃。 人間の反応速度など軽々と越えた電撃は、蛇の様に蛇行しながら西王に向かって延びていた。 僕ら一般人には、網膜に焼き付いた残像位でしかその電撃の存在を知ることは叶わないだろう。 しかも、その一撃がもたらした爆音に、僕らの耳は麻痺してしまった。 ステージ上はどうなった…? 火炎旋風。 とぐろを巻く灼熱の炎が、これまた蛇みたいに西王に巻き付き、その主人を守っていた。 その上、よく見なければ分からないが、西王は透明な水のベールでその身を包んでいる。 要するに、電撃は炎と水に阻まれたため、西王は無傷だった。
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