72人が本棚に入れています
本棚に追加
うまくごまかせただろうか。普通に考えて、お兄ちゃんが下まで降りて上がって来るまで私がお兄ちゃんの部屋にいた事はおかしい。
心臓が強く拍動する。自分でも音が聞こえるくらいに。お兄ちゃんに怒られるかもしれないから。自分の立てた仮説が怖いから。
しばらく経ったけど、お兄ちゃんが何も言ってこないって事は、ごまかせたようだ。
でも問題はここからだ。
お兄ちゃんの部屋のファイルから抜き出した写真。これを見て浮かんだ仮説。
お母さんは実は浮気をしていた。
………有り得ない。もしそうならお兄ちゃんが写っている理由がない。
お母さんとお父さんとその友達で遊びに行き、お父さんが写真を撮っている。
………これもない。私がいない理由にならない。
自分が初めに立てた仮説を考えるのが怖くて、別の仮説を必死に考える。
4つほど考えたあと、やっぱり最初の仮説にたどり着いた。
嫌だ…。絶対違う…。そんなことあるわけない…。
そうよ!有り得ない有り得ない!
だって、血液型だってお父さんがA型でお母さんがB型。お兄ちゃんも私もAB型だもん。
物心がついた時からお兄ちゃんと一緒だったし、お父さんもお母さんもいた。
そりゃ、あんまり私とお兄ちゃんは似てないけど、性別が違うから仕方ない、だろうし…。
でも、私とお兄ちゃんとでは成績も運動神経も全然違う…。
私は、お父さんにも、お母さんにも似てない…。お兄ちゃんも、どちらにも似てない…。
嫌だよ…。認めたくないよ…。私とお兄ちゃんは…、絶対、兄妹だもん…!他人のはずがないんだもん!
考えれば考えるほど、ドツボにはまっていった。どう考えても、仮説を覆すことが出来ない。
急に涙が込み上げてきた。仮説を否定出来ない。肯定するしかない。
そうなれば答えは一つだった。
ベッドの布団に潜り、声を殺して泣いた。お兄ちゃんに聞かせる訳にはいかないから。
だって、心配してくれたお兄ちゃんに何て言えばいいの?
お兄ちゃんとは義理の兄妹だっていうのが悲しいって言うの?
そんなの、出来るわけない…。
最初のコメントを投稿しよう!