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ずっと泣いていた。明かりを付けていない部屋は少し暗くなっていた。
今日の自分の変な好奇心のせいで、お兄ちゃんとの想い出が全て崩れた。
お兄ちゃんと私は、どうやら義理の兄妹らしい。どれだけ探しても、否定出来る材料がない。むしろ、肯定できるような材料しか出てこない。
お兄ちゃんに聞いて、否定してもらえばいい。
そんな考えも浮かんだ。だけど、もし肯定されたらどうするの?お兄ちゃんから直接本当の兄妹じゃないって言われたら、普通でいられる自信がない。
想像、というより妄想の段階でこんなに辛いんだから、直接言われたら…。
コンコン
ドアをノックされ、思考が一気に止まる。また心臓が激しく動き出す。
秀「…愛理?」
相手は思った通りお兄ちゃん。お兄ちゃんは私が許可を出さない限り絶対ドアを開けない。だから、このまま寝たふりをしてもよかったのだけど、
愛「…な、何?」
なんとなく返事をしてしまった。
秀「いや、今日の夕飯は愛理が当番ですからね、そろそろ作ってもらわないと」
それを聞いて時計を見る。19時を少し過ぎていた。
愛「わかった。すぐ作りに行くから待ってて」
うまくいつも通り喋れただろうか。まだ泣いていた時の余韻が残っていたから、あまり自信はない。
秀「………大丈夫なんですね?」
ドキッとした。まるで全て見透かされているようだった。
愛「な、何がよ…」
秀「…いえ、大丈夫ならいいです。夕飯、頼みましたよ」
隣の部屋のドアが閉まる音がする。
やっぱり、全部お見通しみたいだ。全部と言っても、泣いていた理由はわかってないと思うけど。
お兄ちゃんが自分の部屋に入ったのが何よりの証拠。
何だかんだでお兄ちゃんはいつも手伝ってくれる。だけど部屋に入ったって事は私と会わないようにするためだろう。私が泣いていたって事がわかったから。
いつも私に優しいお兄ちゃん。そんなお兄ちゃんが私は大好きだ。だけど、お兄ちゃんはお兄ちゃんじゃないかもしれない…。
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