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チッチがこの家からいなくなって、二、三日たった日の朝のことだった。
台所の換気扇の側で煙草を吸う旦那の肩の上にいるものと目が合ってしまった。
「あ、チッチ」
「あん?」
「肩の上に乗って、こっち見てますけど」
「あ~だからか~ここ一日二日の間に、フワッと肩が暖かくなってたんだよな」
「やっぱり、あんたの肩に乗るんかい💧」
「へへん(笑)」
「うわぁ~一番世話したの私じゃんっ、チッチの薄情者~💢」
しかし、旦那が仕事に行ってしまうと、チッチの気配はしなくなってしまった。
そして、夜に旦那が帰ってくると、その肩の周りを飛び回る姿があった。
「あ、飛んでる」
「ああん、そう言えば、今日、猫に睨まれた💧」
「猫?」
「ジトォっと、人のこと見て、すげぇ不満げな顔で去っていった💧」
「確かに、今のチッチは食えんわな(笑)」
「じゃあ、一日、俺の肩に乗ってたのか?」
「だろうね。一番、あんたになついてたもの」
旦那と猫の相性は最悪で、過去に牙が四本、根元まで刺さるほど噛まれたことがある。普段は目が合えば、猫はそそくさと逃げるぐらいに嫌われているのだ。
「ま、チッチはあんたに憑いてるつもりだろうから、なんかあって、命拾いしたらチッチのおかげと思いなさいね。霊体は正直な気持ちの現れだから、建前なんてないんだから」
「姿が見えないもん」
「あんたの肩の上で居眠りこいてるわよ」
「生きてる時と変わらんじゃん💦」
「そりゃ仕方ない、あんたの肩の上で寝るのが日課だったんだから(笑)」
さて、本鳥は死んだ自覚が無いらしく、しばらく旦那の肩に居座り続けた。
おかげで、死んだ寂しさは薄れ、生前と同じ行動をとり笑いを振りまいてくれた。
しかし、チッチ、ほんとにそれでいいのか?💧
虹の橋で再会しようねと、泣いて見送ったのは何だったんだ?💧
ま、チッチが満足ならいいよ。好きなだけ居たらいい。で、来るべき日がきたら彼岸に旅立ちなさいね。
そして、今度はちゃんと翔べる翼を持った健康な燕に生まれ変わって会いに来てね。
ちなみに、チッチはその後も二週間ほど旦那の肩に居座り続けておりました。
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