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海辺の小さな町。
外回り用のトラックで、細い路地にゆっくりと侵入した。
「ん?」
道のど真ん中に、黒い小さなものが落ちていた。
トラックを止め降りる。
「葉っぱ?カエル?…なんで燕?💧」
確かに時期的にあちこちに巣があり、雛鳥が巣立ちの準備で飛び回っていた。
両方の翼を広げたまま、地べたに這いつくばってる姿は、鳥には見えなかった。
「なんで、墜ちてんの?💧」
そのまま見捨てることも気が引けて、捕まえようと手を伸ばすと、警戒心を煽ったらしく、必死に逃げ出した。
バタバタ💦バタバタ💦
草むらに飛び込んでしまい、そのまま様子を見ていると、また飛び出してきた。
「こらっ、待てっ💦」
なかなか捕まえられず、考える。仕事中に網など持っているわけもなく、一旦トラックに戻り、網の代わりを物色する。
汚れた雑巾があった。仕事柄、油汚れを拭き取ったりして黒くなってる部分もあったが、乾燥していたから使うことにした。他に無いから仕方ない。
「ほれっ」
パサッと上から被せると、ちょうどクチバシが見える程度に覆うことが出来た。
「お~し」
ソォ~と、雑巾ごと掴みあげ、トラックの助手席に載せた。
「て、どうすんだよ💧」
捕まえたのはいいが、ペットというものに縁が無かったせいで、世話の仕方がさっぱりわからない。
携帯を取り出し、自宅に電話をかける。応答は留守電。仕方なく携帯にかけると出た。
「燕、拾った」
〈はぁっ?なんで?〉
「墜ちてた」
〈用事あるんだけど💧〉
「何とかしてくれ💦」
〈戻るから、わかる場所にいて💧〉
「んじゃ、バイパスの喫茶店の前にいるから」
〈わかった〉
電話を切り、トラックを移動させた。
喫茶店の前で待つこと数分、すごい勢いでカロゴンが走ってきて、目の前に止まった。
「なんだかなぁ~出掛けられなくなったじゃん」
「わりぃ、何とかしてくれ」
と、雑巾にくるんだままの燕を見せる。
「なんか、車に包めるもの無い?」
「ん~ちょっと待って」
運転席のドアを開け、何やら白い布を持ってきた。
ソォ~と、それで包み直した。
「じゃ、仕事に戻るから」
「あ"何?面倒見ろって?」
「お前の方がわかってるだろ」
「ん~💧否定はしないけど、死んでも知らんよ」
と、口では言っても、前科持ちの彼女に任せておけば、自分がやるより生き延びさせられると思っていた。
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