燕のチッチのドタバタ騒動記

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二週間も過ぎると、北国にも盛夏がやって来た。 今年は例年にない猛暑で、家の中も暑かった。 窓辺に置いたテレビの上がチッチの定位置になっていた。そこなら、飛べなくても外が見れるという判断だった。 チッチは、外を飛び抜けていく仲間の姿を見つける度に"チィ⤴チィ⤴"と鳴いていた。 「仲間、見つけたか?」 一緒に飛びたいのか、バサバサと羽ばたくが、バランスを崩して、バタバタするのがオチだった。 そして、この窓辺には落とし穴があった。 朝日がまともに差し込むのだ。 「あ"、口、開けてる」 「暑いのか💦」 羽を下げ、斜めになり、口をカパーと開けてる様は、真正面からみるとマヌケだった。 「朝からこれって、力抜ける~💧」 「おもしれ~顔」 早速、携帯で写真を撮る。 「つかさ、暑いなら飛んで移動すればいいじゃん」 「それ、出来れば外に放すってば💧」 実際、目標に到達出来ずに、留まれず、床に墜ちるか、掴まり損ねてずり落ちることがほとんどだった。 しまいには、隙間に墜ち、助けを求めて見上げることもしばしなのだ。 「だから、助けを求めるくらいなら飛ぶなって💧」 いつぞやなど、棚の後ろに入り込み、手を入れることも出来ずに困り、餌を見せるとつられて、自力で脱出してきたことがあった。 「そんなに腹減ってたんかい」 必死に棚の隙間から這い出してきた姿は、笑えると同時に可愛かった。 すっかり、手に乗ることに慣れ、餌を食べる時には、餌を持った手に飛び乗ってきて、コップを覗き込んで催促するようになっていた。 そののぞきこむ後頭部が可愛かった。 「あ、チッチが水に落ちたっ」 次男が叫んだ。 見ると飲み水用に置いておいたコップの縁につかまり、水浴びしていた。 「いいんだけどさ、周りに水が飛び散るんですけど💦」 左の翼が開きにくいため、バランスが悪く、羽ばたく度にコップから落ちそうになる様は、見ていてハラハラもんだったが、水浴び後の満足げな顔には笑うしかなかった。image=369668999.jpg
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