こよみラクーンドッグ

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 阿良々木暦について何かを語ろうとしたところで、 実際に口に出来ることには、特別な話なんて意外なくらいほとんどなくて、 基本的にただの事実にしかならないプロフィールばかりである。  自らのことを語る際に、そこから主観を取り除いたら、 他のどんな他人を語るよりも情報が少なくなるのは、ある意味当然と言えなくもない。 自分のこと以上に主観に頼って捉えている物事は――普通、ほぼないからだ。  他人の目から見えている自らの姿形を見ることは、 鏡をもってしても絶対に不可能であるのと同じように。  他人が聴いている自らの生の声を聴くことは、 録音機器をもってしても確実に不可能であるのと同じように。
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