カイゴウ

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「―はい、今日で1学期は終わりだな。次に会うのは…まあ、補修や学祭準備もあるから、当たっている人とはすぐに会える訳だが」 終業式を終え、今は1学期最後のHRで担任の笠井が話し中だ。 ―こんな暑い日に、わざわざ喋る必要あんのか? てか、なんで終業式で校長の長々とした話を聞いた直後にさらに話を聞かなきゃいけないのかが分からん。 とっとと帰らしてくれればいいのに。 「及川、聞いてるか?」 なんて思ってたら、注意された。 「お前は補修も取ってないし準備の役もしてないな。中2の夏だ。強制するつもりはないが、何かクラスの奴と一緒になって―」 やっと話が終わったと思ったら、今度はお呼び出し。…完全に目付けられた感じだな。 笠井先生はいつも短髪にジャージ、おまけに運動神経抜群で暑苦しい性格のくせに古文担当という変わった先生だ。 その爽やかさとまあまあのルックスから、男女のどちらからも好かれている。 特に一部の女子からは告白された事まであるらしい。 ―しかし、今考えると、そいつ重度のバカだよなあ。 いくら若いからって、教師と生徒じゃ今時まかり通る訳無いのに。そんなの、一昔前の小説にだってあるかどうか… いや、若い っつっても30後半くらいって聞いたし、そうでもないのか? それに左手の薬指。他の部分と比べて微妙に白いし、くびれている。 この前読んだ小説の知識を、まさか担任に発揮することになるとは思わなかったけれど、 これはどう考えても… 「こら。聞いてるのか」 また怒られた。
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