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「なあ浜野」
「うん?」
「笠井ってバツイチ?」
「?…ああ、薬指ね」
気付いてたか。
気付いてなかったら得意げに説明出来たんだけどな…
まぁ、本題はそこじゃない。
「ああ。何か知ってるか?」
「…知らないし、知ってても言わない」
「ん?」
「及川君も、聞いたりしちゃダメだと思うよ」
「なんで」
「それが必要な事ならば、だよ。別に知らなきゃいけない訳じゃないんでしょ?」
「…まあ」
「何でもかんでも質問出来るのは子供の特権だと思うけど、それでも多少の線引きは必要だと思うんだ」
「…質問していい問題かどうかを判断しろってことか?」
「そう。根掘り葉掘り尋ねることを、僕はあまり良いとは思わない。人には言いたくないことや、聞かれたくないことってあるもんだからね。
知らないことを、知らないままに。
知ることを怠けるんじゃなく、知らないままでいることを選択する。
…我ながら考えすぎだとは思うんだけどね。ひょっとしたら全然たいしたことじゃないかもしれないし」
「…大人だな」
「臆病なだけだよ。…じゃあ今度こそ」
「おう」
…あいつは本当に中学二年生なんだろうか…
割ったら中からオッサンが出て来たりしないよな?
まぁとりあえずこれで、笠井の過去について考えるのは止めておくか。
知らないことを、知らないままに、だ。
それに、そもそもあいつの事なんて知りたい訳じゃねーし。
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