邂逅

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息を殺して耳を澄ますと、微かに空気の擦過音がした。どうやら人の寝息らしい。とても無防備な、子供のものらしい寝息が、分厚い闇の幕の向こうから聞こえる。 という事は、割と安全な空間なんだろうか。 暑くも寒くも、湿っても乾燥してもいない。風も雨もない。 床に触れてみると、柔らかかった。 カーペットか。どうやら室内らしい。 子供が寝ているような場所には危険が無いだろう。あるとしたら様子を見にくる親に見つかる位だと思って、少し緊張を緩める。 ひょっとしたらこの子供は監禁されていたり、実は子供ながら大罪人で、ここは牢屋だったりするのかもしれないが、何らかの監視がある場所なら外から覗く窓がはずだ。窓から明かりが漏れるだろうから、こうも真っ暗な訳がない。監視カメラでもあるなら話は別だが。 装置の文字盤の明かりで部屋の内部を窺う。 子供部屋らしく、ぬいぐるみや、絵本を詰めた本棚、玩具箱、小さなテーブルとイスが微かな光にぼんやりと浮かんだ。
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