歓待

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「うれしいわ、今まで本物のお客様がいらしたことなどなかったから、ねえルドルフ?」 少女は既にポットの中に入っていたお茶を美しく繊細な柄のティーカップに注ぎながら、傍らのクマのぬいぐるみに話しかけた。 「どうぞ」 「……ありがとう」  少女が差し出したお茶を受け取る。馥郁たる香りが鼻腔に広がった。 口に含むと、上等なものらしく美味しくはあったのだが、あらかじめ入っていたらしい砂糖の甘ったるい味ばかりが強かった。 少女の為に作られた皿や茶器はままごと道具のように小さいが、皿には山と菓子が積まれていた。 クッキーやケーキ、ビスケット、キャンディ、チョコレート。 どれも甘い味のものばかりだった。少女は食べている間中、 「お客様と一緒だといつもよりおいしいわね、メアリー?」 「ミシェル、おかわりはいかが?」 とウサギのぬいぐるみや人形に話しかけていた。勿論人形達が自ら動いて菓子を食べる事も、おかわりをせがむ事もなかった。少女も人形達に返事を求めてはいなかった。 少女にはそれでよいらしい。 満腹になる事はなかったが、どうにか空腹はしのげる程度にはあった。少女には十分満足する量らしい。 食べ終わると「おなかいっぱい」と呟いて幸せそうに笑った。 俺も甘さで胸一杯にはなった。
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