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リーダー格の男が手で合図する。
見計らった様に、冷たい風が吹き抜ける。
同時に、後ろの二人がクルノを挟むように突っ込んできた。
心の中でクルノはふぅ、とため息を吐く。傭兵になって二年、仕事は少なくても、実戦経験はそれなりにある。
ほぼ同時に迫って来る右側の男に槍の柄を跳ね上げた。リーチを活かして放たれた一撃は顎を正確に捉える。手応えは十分にあった。
クルノは仰け反って倒れこむ男には見向きもせず、もう一人の男に向き直る。
連携は簡単に崩れた。向かってくる男は今更戻れず、にそのままクルノにナイフを突き出す。焦りか、恐怖からか、遅くて、隙だらけの一撃だった。
クルノはそれを体を捻ってかわし、鳩尾に膝蹴り。
腹を抑えてうずくまる男の首に肘を落とす。倒れこむ男が持っていたナイフが、鈍く光を放っていた。
クルノは腰に挿していたナイフを最後の一人に向けて投げる。
そのナイフは、少女の所に向かおうとした男の目の前を通り、壁に刺さる。
通り過ぎた死の光りに、男の動きが止まった。少女に何をしようとしたのか、しかしその行為は未遂に終わる。
仲間が一瞬にして倒され、最後の手段も見事に潰された。そんな哀れなリーダーの男が最後の悪足掻きに何かする前に、クルノはその情けない顔面に思いっきり拳を叩き入れた。
モロに拳を受けた男は、そのまま後ろに倒れた。
日常の様に、繰り返される争い。そして、こんな小さな戦いは珍しい。そんな世界。
クルノも傭兵になるその前からずっと――戦いだった。
☆ ☆ ☆
血のような赤黒いバンダナ。
もし本当にそれなら、最近急激に知名度が上がった“バビル盗賊団”が思い当たる。
非常に惨忍かつ酔狂な集団で、トレードマークとして血の様に赤黒いバンダナを身に着けている。
街と街、国と国を行き交う商人達を中心に被害が増えている。首に巻いたバンダナの色は被害にあった人の返り血だとか、そんな噂が流れる程の盗賊団だ。
クルノはそんな王国の騎士団も手を焼く様な、あのバビル盗賊団らしい男達を赤いバンダナで縛る。この男たちのトレードマークらしいバンダナは普通に大活躍だった。
悪名高い盗賊団を語った只の雑魚だろうな、とクルノは思う。
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