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快斗は無理に会話をしようとせず隣を歩いた。
すると奈美の方から
「私は、薬剤師になりたいんです。男も女も関係なく働けるし…父がいなくて母が一人で働いてる姿見てたら…男の人に頼らなくても私は生きて行ける様に稼げる仕事に就きたい。て思って…自分が歪んでるって実感してるんだけど…」
「確かに!歪んでる!」
奈美は足を止め快斗を凝視した。
だが、快斗は気にせず
「けど、薬剤師を選んだ事は人を助ける業種だから、ホントは優しい人だと思う。だからって訳ではないんだけど、俺の事、頼りにしてくれないかな?」
自分でも驚くほど自然に言葉が出た。
奈美は相変わらず快斗を凝視したまま…
くるりと後ろを向きうつむいた。
肩が小刻みに揺れている…
泣いてる!?
快斗はしばらく動けずにいると奈美は声を振り絞り
「私は…好きな人を…作れないと思ってたのに…なのに…」
やっと快斗は動き出し、後ろから奈美の肩を抱き寄せ
「今まで一人で…いや!お母さんと二人で頑張ってたんだ…。だから、男の人に対して距離を置いていたんだね。でもこれからは、その距離を少しずつ縮めてもいいんじゃない?俺は頼りないかもしれない。けど、隣で支えていたい。」
奈美は快斗の腕を掴みしばらく泣いていた。
気持ちを落ち着かせ、快斗の腕を自分から離し、振り向くと、快斗の目を真っ直ぐ見つめながら
「私、距離を縮められるかな…?上手く頼れるかな…?」
「上手く距離を縮められなくても、頼れなくても…俺は隣に居て支えるよ。」
奈美はありったけの笑顔で
「はい!」
赤くなった目と赤くなった鼻…
透き通る様な白い肌だから余計に目立つ。
そんな顔を見て快斗は改めて奈美を好きな事を実感してギュッと抱きしめた。
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