158人が本棚に入れています
本棚に追加
/269ページ
「ストラックアウッ!ゲームセット!!」
「うっしゃあ!」
東が両手を上に広げた。
グラウンドに散っていた皆が、一斉に東のもとへ集まってくる。
そう。今日は県大会の2回戦なのだ。
いや。“だった”のだ。
試合が終わった今となっては、2回戦の話などすでに過去になる。
1対0。
桜見大の先攻で、投手戦の末に勝利した。
ただ、投手戦と言えば聞こえはいいが、実のところ相手校のピッチャーが特別凄いわけではない。
こちらに、点を取れる選手が少ないのだ。
逆に相手チームにも、点が取れる選手がいない。
前回の試合で懲りたのか東は打順は9番に入り、8回に左中間へノーアウトからのツーベースヒットを打った。
1番の江原、2番の仲谷は三振に倒れ、新谷のライトの頭を越えるヒットで東がホームへ。
後は東がしっかり抑え、2回戦を勝利した。
「あれ?次、勝ったらベスト16じゃね?」
倉橋の言う通りである。
それを聞いた瞬間、全員が「おぉ~~~~~!?」という声を上げた。
初出場でベスト16ともなれば、相当強い事になる。
普通は1回戦でも、勝ちあがるのは難しい。
それが、2回戦を勝ったのだ。
自信を持っていいだろう。
そして、東たちは2日を挟んで3回戦を行う。
3回戦と言えば島崎のいる学校が勝ち上がってきたので、次の相手は島崎たちだ。
大荷(ダイニ)第一高校。
島崎いわく「第一高校なのに、“大荷(第二)”なんですか?」と、よく他校生に言われるとか。
「大荷(第二)なのに、第一?」と言う声もあるらしい。
どちらでも良いだろ、というのが本音だが。
野球部には部員が少なく、レギュラーには2年生も多い。
1年生もいる。
そんな環境だからか、島崎もキャッチャーでレギュラーを取る事ができたそうだ。
「島崎って、どんな奴なんだ?」
大荷第一との試合が決まった時、新谷が東に聞いた。
まず、キャッチャーには珍しい左利き。
プロでは見た事もない。
実際に全員を見たわけではないが、まずいないだろう。
最初のコメントを投稿しよう!