島崎 修吾

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「ストラックアウッ!ゲームセット!!」 「うっしゃあ!」 東が両手を上に広げた。 グラウンドに散っていた皆が、一斉に東のもとへ集まってくる。 そう。今日は県大会の2回戦なのだ。 いや。“だった”のだ。 試合が終わった今となっては、2回戦の話などすでに過去になる。 1対0。 桜見大の先攻で、投手戦の末に勝利した。 ただ、投手戦と言えば聞こえはいいが、実のところ相手校のピッチャーが特別凄いわけではない。 こちらに、点を取れる選手が少ないのだ。 逆に相手チームにも、点が取れる選手がいない。 前回の試合で懲りたのか東は打順は9番に入り、8回に左中間へノーアウトからのツーベースヒットを打った。 1番の江原、2番の仲谷は三振に倒れ、新谷のライトの頭を越えるヒットで東がホームへ。 後は東がしっかり抑え、2回戦を勝利した。 「あれ?次、勝ったらベスト16じゃね?」 倉橋の言う通りである。 それを聞いた瞬間、全員が「おぉ~~~~~!?」という声を上げた。 初出場でベスト16ともなれば、相当強い事になる。 普通は1回戦でも、勝ちあがるのは難しい。 それが、2回戦を勝ったのだ。 自信を持っていいだろう。 そして、東たちは2日を挟んで3回戦を行う。 3回戦と言えば島崎のいる学校が勝ち上がってきたので、次の相手は島崎たちだ。 大荷(ダイニ)第一高校。 島崎いわく「第一高校なのに、“大荷(第二)”なんですか?」と、よく他校生に言われるとか。 「大荷(第二)なのに、第一?」と言う声もあるらしい。 どちらでも良いだろ、というのが本音だが。 野球部には部員が少なく、レギュラーには2年生も多い。 1年生もいる。 そんな環境だからか、島崎もキャッチャーでレギュラーを取る事ができたそうだ。 「島崎って、どんな奴なんだ?」 大荷第一との試合が決まった時、新谷が東に聞いた。 まず、キャッチャーには珍しい左利き。 プロでは見た事もない。 実際に全員を見たわけではないが、まずいないだろう。
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