島崎 修吾

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《愛知県……市、くもり。ところによっては、雨がパラつくところもあるでしょう。傘を持ってお出かけ下さい……》 朝の天気予報が流れる食卓で、東は朝ご飯を食べていた。 時間にも余裕があり、朝ご飯をゆっくりと食べる事ができる。 《……続いて、スポーツの話題です》 東の箸が止まった。 どうやら、野球の事のようだ。 《夏の高校野球、愛知県大会の模様です。レイヴンズの大エース“和久井 忠信”選手の一人息子でもある“和久井 流哉”選手が、昨日の県大会2回戦で力投を見せてくれました》 「兄貴、和久井選手の息子だって」 「知ってるよ」 そう言って、東は食器を持って立ち上がる。 流し台に食器を置くと、ドアを開けてリビングを出て行った。 《和久井選手は5回まで奪三振3、四死球0で相手打線をパーフェクトで抑えました》 一人残された舞は、ご飯を口に運びながらテレビを観る。 「ふべぇな(すげぇな)」 食べながら、ぼそり…とつぶやいた。 《しかし、6回。0対0、ノーアウト、ランナー無しの場面で迎えたのは、強打者の山田。右中間へのツーベースヒットを許します》 「はびはほ(マジかよ)!ほっはいなひ(勿体ない)!」 舞はご飯を口から飛ばしながら、興奮してテレビに近づく。 それを、キッチンから見ていた母親に怒られた。 《が、これでペースを崩す事もなく、7・8・9回とノーヒットに抑えます。最後は、9回裏に坂本選手が放ったサヨナラ3ランで勝利。四ツ葉工業高校、3回戦に駒を進めました。そして、この試合で和久井選手は被安打1、失点0の好投。大エースの息子らしい活躍を見せてくれました》 「ふべぇぇぇえぇえ(すげぇぇぇえぇえ)!!……ゴクン。兄貴に教えてやろ」 舞はゴクンッとご飯を飲み込むと、食器を流し台に放り、二階で準備する東の元へ駆けて行った。 「舞!食器はちゃんと、お湯に漬けてきなさい!」 母親の言葉にも耳を傾けず、舞はリビングを出て階段を駆け上がる。 階段を上りきった後に、右に転回。 その一番奥にあるドアを、中の様子を確かめずに開け放った。 その目に飛び込んできた光景に、舞は「きゃああああああ!!」と悲鳴を上げる。 朝から、ご近所さんに迷惑な事である。
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